以前現場でこんな相談をされたことがあります。
僕の現場ではなく他の現場での話なんですが、基礎工事で鉄筋が組まれ、コンクリート打ちまでの間に鉄筋が錆びてきていると建て主の方から指摘を受けたそうです。
もちろん多少の鉄筋に浮いた錆びらな問題ないのは知っているのですが、それを建て主に納得できるように説明できる自信がありませんと。それなら一度、「青木先生なら何て説明するのかを聞きたい。」という事で僕に質問が来ました。
もちろん1週間とか2週間程度で起こるような錆は全く問題ありません。錆は表面に浮いているだけで鉄筋の強度に影響を及ぼすような断面的な欠損は限りなくゼロと言えるからです。
また納品されたばかりの鉄筋には錆止めのための油が塗られています。油って表面を潤滑させる性質もあるので鉄筋の表面に油がそのまま残っている状態でコンクリートを打設するよりも、鉄筋とコンクリートの付着性(くっ付きやすさ)の点から鉄筋の表面の油は無い方が良いと言えます。なので鉄筋の表面に錆が浮いてきた状態というのは適度に表面の油が無くなってきた状態と言えるのです。
ただ、表面に錆が浮いた状態ならまだしもコンクリートを打設した後に基礎の中で錆が進行しないかという不安を口にされる方もいらっしゃいますが、錆が発生するには空気(酸素)が必要であり、コンクリートで密閉された状態ではその空気の供給が行われないという事により錆びの進行がそれ以上進まないと言えます。また鉄筋が酸化して表面に錆があったとしてもアルカリ性のコンクリートで包まれることにより中性化へと導いてくれるのです。
おそらく鉄筋の錆びを気にされてしまう原因というのは、よく目にする鉄筋が錆びて表面のコンクリートが剥がれている状態ではないかと思います(爆裂と呼びます)が、これはコンクリートの打設時に鉄筋に錆が付いていたからという訳ではなく他の原因によるものと言えます。
コンクリートはアルカリ性と書きましたが、長い年月の間に外側から少しずつ中性化していき、そのコンクリートの中性化が鉄筋まで進むと今までアルカリ性で保護されていた鉄筋が酸化しやすい状況に変わってしまいます。なので表面から鉄筋までの距離(かぶり厚と呼びます)の確保が鉄筋コンクリートの寿命に大きく関わってくるのです。なので僕は配筋検査の時(あるいは型枠チェックの際)にはこのかぶり厚をしっかりと確認するようにしています。
もちろん何かひとつが大事という訳ではなく、全体を通してバランスよく見る目が大切ですね。