ウッドショックと聞いても何のことだかよく分からない方も多いかと思います。
一般的にはほとんど報道されていないのがその理由かと思いますが、建築関係者(特に木造を扱う関係者)の間では今非常に深刻な問題として広がりつつあります。
石油ショックが原油価格の急激な高騰によるものと同じように、現在、建設に使用する木材が高騰して品薄状態となっているのがウッドショックです。
その原因はまず、現在アメリカではコロナ禍においての超低金利政策による空前の住宅建設ラッシュのため、日本で木造住宅に使用する輸入材がほとんど日本に入ってこないというのが一番大きなところ。
木造住宅でよく使用される輸入材が米松という木材で、曲げ強度もあり、大きな断面寸法の材が安定して取れるため主に梁などの横架材に使用されます。その米松をはじめとした輸入材がほとんど日本に入ってこなくなってしまい、今まで米松や安いホワイトウッドなどの輸入材を使用していた建売住宅やハウスビルダーなどが代替品として(コストは上がるが)桧や杉などの国産材を採用し始めたため、国産材までも品薄状態になってしまい、木材全般の流通に支障が出ているような状態なのです。
3月の後半あたりから木材不足は耳にしてはいましたが、今までも住設機器や合板などの流通がコロナなどの影響でストップする事もありましたので、多少品薄の状態が続いてもまた何か月かすれば落ち着くのだろうと考えていました。ところが事はそれ程簡単な事ではないようです。
構造材が発注できなければ木造住宅は工事を行う事が出来ません。工事請負契約を交わしたけれど急激な木材の高騰で契約内容の見直しを余儀なくされる事もあるでしょうし、何より契約をしても工事が始まらないので大工さんはおろか、それ以降の工事に関わる職人の仕事などもストップしてしまうのです。
山に木は植わっている訳ですから国産材の流通量を増やして対応すればよいのではと考える人も多いかと思いますが、実は国産材の流通というのは安い輸入材に押されて多くの山がかなり廃れてしまっているのです。国産材があまり売れない訳ですから伐採する人員も少なくなり、山を管理する手も少なくなり、山は荒れてしまっているのが実情です。国産材の流通量を増やすためには人員の増員が必要ですし、人員は誰でも良い訳でもありません。木を伐採したり運搬する重機だって増やさなくてはいけませんし、場合によっては道路を整備する必要だってあります。また林業自体の構造的な問題もあり、事が急に進むわけではありません。
木材の値上がり幅は現在20~30%くらいと耳にしています。(※場合によっては40%くらいとも)
僕が設計する家で多い30坪前後の家なら構造材(合板類は除く)の材料費はおおよそ200万円前後(160~250万円)くらいなので、コストアップは40~60万円(税抜)といったところでしょうか。単なるコストアップならまだ道はありますが、材料が手に入らないとなるとお手上げです・・・。
しばらくこのウッドショックの動きに注視したいと思います。