連日テレビでは例の傾いてしまったマンションの報道をやんややんやとやっている。建設会社や下請け業者、現場代理人などについてあれやこれやと挙げて叩いている。エンブレム問題や新国立問題の時もそうだけれどこういった魔女狩りのような報道の仕方は本当に嫌になる。
確かに、杭が支持層に届いていないのを故意に隠蔽したとすれば、またそれを知ってデータを偽造したとすればそれは許されるべき事ではない。しかし今回の建設会社や下請け業者だけが悪いのかと言うと僕は決してそうではないと思う。
テレビで同業の杭業者が顔を隠してインタビューを受け、こういった事は日常的にあると答えていた。そして今までは何の問題も起きていなかったとも言っていた。
ここで今回のマンションの傾きについて考えてみる。
報道によれば54mの長さに対して最大で2.4cmの沈下が起きたという事です。これを勾配の数字に直すと0.44/1000となります。
1m(=1000mm)の長さに対して0.44mmの沈下という事です。これはもうほとんど施工誤差くらいの水平レベルです。ほとんどその傾きを感じる事も無ければ機能上もほとんど支障が無いレベルと言えます。
傾きの目安として3/1000という数字があり、これ以下の傾きなら人間は何も感じることが無く、瑕疵の可能性が低いと言われるレベルです。(※実際に施工不良があるかどうかは別の話ですが。)
3/1000に対して0.44/1000という数字ははるかに小さい数字です。つまり何もなければ誰も気づかないほど小さな傾きなんです。ところがたまたま隣につながる形で建物が建っていたものだからそれに気付いたという訳です。
何が言いたいかというと、これくらいの傾きがある建物は気づいていないだけで他にもたくさんあるはずだという事です。他にもたくさんあるから今回のマンションも気にする事ではないと言っている訳ではありませんよ。インタビューに応えていた同業者の話から考えても、(建設会社が違う)他にも今回のマンションと同じような杭が届いていないケースが気づいていないだけで存在したって何の不思議もないということです。
特定の建設会社や下請け業者を袋叩きにしたところで、おそらくこれは建築現場や社会全体の構造的な問題であるので根本的な問題は解決しないという事です。
僕自身もこのような業者と施工不備でバトルした事もありますが、すぐ隣にそういった危険が潜んでいるのです。
有名な会社だから安心とかそういった事ではなく、誰がどうやって作っているのかということを通して見える事もたくさんある気がしますよね。社会のいろいろなことがブラックボックス化して中身が空洞化している事が大きな問題な気がします。もちろんそうさせているのはそういう風潮を良しとする社会や消費者でもある訳です。