建物の構造には大きく分けて、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(S造)、木造(W造)の3種類があります。細かく分ければまだいろいろとありますが、基本的にはこの三つの構造方式で建物は出来ています。
住宅で言えばそのもっともポピュラーな構造と言えば木造ですし、日本は木造建築と共に歩んできたとも言える僕たち日本人にとっては最も馴染みの深い構造形式です。
木造は当然のことながらその構造的な骨格が(基礎を除き)木でできています。今回はその木について少し書こうかと思います。
木と言えば「木は水に弱い」とよく言われます。
でもこれは半分正解であり、半分は間違いであるとも言えます。
「え?」と思われる方もいるかもしれませんが、木は水の中では腐りません。水の中に入っている限りでは木は腐らないのです。もちろん、水の無い乾燥した状態でも木は腐りません。ではどういう状態で木は腐るのかというと、水に濡れいつまでも湿気を含んだ状態のまま空気に触れていると腐るのです。だからどれほど濡れようがすぐに水分が乾いてしまうような環境では木はほとんど腐りません(※もちろん木の種類による耐久性にもよりますが)。
また、木は生きている間に自分自身に水分をため込んでいます。ですから伐採した直後の木は水分がいっぱあります。切りたての木は活きがよく強そうなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、実は水分を多く含んだ木というのは強度はあまりありません。乾燥するに従って木はどんどんと強度が増していく材料なのです。
木は乾燥の過程で、ねじれたり割れたりしますので、木材の材料として製材する前にある程度乾燥させます。その乾燥させた木材を使用し家を建てても、木は年月を掛けてさらに乾燥していきます。よく新築の家で夜中に「パキッ!」という音が聞こえると言いますが、これは気が乾燥し木が割れる時に発する音です。木が割れると聞くと「強度は大丈夫なの?」と心配される方もいますが、木は強度を上げながら乾燥していますので、乾燥ひび割れに対する強度的な問題はほとんどありません。それは実験でも明らかにされており、強度が落ちてもせいぜい1~2%程度のものなのです。また木というものは工業製品ではありませんので、厳密に言うと木によって強度にある程度のバラつきがあるものです。そして、そういった性質を考慮し、木造の構造にはある程度の余裕というものが見込まれています。
木は非常に軽く強い材料です(重さに対する強度で言ったらRC造やS造の比ではないくらいの強度があります)。軽いという事は地盤に与える影響も小さく済むという事でもあります。
また簡単に加工ができて部品の取り換え(更新)も比較的容易にできる材料でもあります(基本的には)。
また、コンクリートや鉄に比べてもはるかに断熱性に優れ、その肌触りも非常に優しく、見た目も美しく優しい非常に優れた材料です。木の香りだって素敵です。
もうひとつよく誤解されるのが、木材と言えば森林破壊を連想する方もいるかと思いますが、木は山(または森林)に生きて植わっているものです。そして(日本の場合)そのほとんどすべてが木材に利用する事を目的に人工的に植えられた木です。だから間伐したりときちんと手を入れてやらなくてはキチンとした木は育ちません。森林破壊だから木は使うなと言えば木は売れなくなり、森林に手をかけなくなり、やがて森林が荒れ、結果的に木をダメにしてしまうのです。木は長いサイクルで成長、伐採、植樹を繰り返すものであり、そのサイクルが壊れれば森林は荒れ放題となり、ましてや木が売れなくなればそれに携わる森林業者も廃業し、やがて木材を手に入れる事ができなくなってしまう可能性すらあります。だから木は使わなくてはいけないんです。
日本の風土や文化とは切っても切れない密接な関係を持つ木ですが、やっぱり素晴らしい材料なんですね。