建築の設計図の中でもとりわけ重要な図面に矩計図(かなばかりず)と呼ばれる図面があります。建物の断面を詳細に描いた図面で、大きな建物なら縮尺1/50で描くこともあるが、住宅のような建物の場合ならば縮尺1/30くらいで描くことが多いのではないでしょうか。僕の事務所でもだいたい縮尺1/30で、時には1/20くらいで描くことが多いですね。また、僕の事務所では矩計図とは呼ばず単に断面詳細図と呼んでいますが(笑)、出来る限り建物全体を描くようにし、描く断面個所も最低4~5面以上は描きます。
もちろん、平面図や立面図(=外観図)などの図面は無くてはならない図面ですが、この矩計図というのはその図面で建物の成り立ち(=つくり方)の大部分が読み取れる図面です。もちろんしっかりと描き込まれてある事が大前提の話ですが・・・。
(現在、実施設計中の「舟津の家」の断面詳細図の中の1枚)
特に僕はこの矩計図と平面詳細図をほぼ施工図のようなレベルで描くので、これらの図面を描いた段階で頭の中では80%くらいは設計図は出来ています。もちろん設計というのは図面を描きながらもどんどん変更したり、修正したりしながら進めていくわけですが、その段階では家のだいたいのディテールというものはすでに頭に入っています。とはいうものの設計図を描くこと自体にかなりの手間と時間がかかるのですがね・・・(苦笑)
ところで、設計図とは何か?
もちろん単なる「絵」ではない。設計図とは当たり前だけど、建物のつくり方を表すものであり、職人や監督がそれを見て建物のつくり方を理解できるものでなくてはならない(もちろんその図面をもとにして正確な見積ができる事も重要ですが)。
時々本当にひどい図面を目にする事があるが、本当に建築の事を分かっているのだろうかと人ごとながら不安に思う事がある。ましてやその設計図で工事が行われているのだから・・・。
世の中はいろいろなところで空洞化が起きている。実態のないような物事や世界は脆いものだということを人はバブル崩壊で学んだはずではなかったのか?
自然豊かなスイスの人々が、地に足をつけた当たり前の暮らしを何百年としているように、中身のある世界であって欲しい。皆さん、そうは思いませんか?