
この本のあとがきに僕がいつも感じていたことをうまく表現している文章が書いてあるので、それを少しだけ紹介しておきたいと思います。
(前略)
仕事を通じて、自分を証明する必要はない。というか、それはしてはいけないことだ。
最大の敵は、常に自意識である。個性的であろうとするよりも、ただ無我夢中でやるほうが、結果として個性的な仕事が生まれる。
仕事とは自分を誇示する手段ではなく、自分と他人に対するギフト(贈与)であり、それが結果としてお互いを満たす。これは理想論だろうか。
贈り物は難しい。押しつけでは意味がないし、足下をみるなんてもってのほかだ。その人が欲しているけれど誰にも明かさずにいる。あるいは本人自身まだ気づいていない何かを、「これ?」といって差し出すことが出来たら、それは最高のギフトになる。
仕事は大きく二つあると思う。「ありがとう」と言われる仕事と、そうでない仕事だ。
僕はデザイン教育を受け、デザインの世界で仕事をしてきた。が、かっこいいデザインが好きではないし、そもそもデザインなんてどうでもいい。惹かれるのは「いい仕事」と称されるものだ。人々が「あれはいい仕事だね」「いい仕事だった」と口にするもの。これはデザイン界に限らず、料理やスポーツの世界にも同じように存在する。
特徴のひとつは、その仕事を手がけた人に対する感謝や尊敬の気持ちが湧き上がることだ。仕事に対して、「素晴らしい」でも「面白い」でもなく「ありがとう」という言葉が返ってくるとき、そこには何が込められているのか。その先を大切にしたい。
(後略)
本の内容は、デザイナーや建築家などさまざまなクリエイターのインタビューを通して見えてくる仕事の取り組み方というものを著者なりに述べています。
デザイナー柳宗理さんへのインタビューが個人的には興味深い。