
メキシコの建築家、ルイス・バラガン(1902-1988)の自邸を紹介した本です。バラガンの本はいくつも持っていますが、今まであまり紹介されなかった写真やバラガン自身の事も紹介されています。
建築を知らない人にはあまり知られていない建物だと思いますが、今も世界中から見学者が訪れる聖地のような建築であり、20世紀最高の名作住宅と呼ばれる住宅です。
僕は残念ながら実際に実物をまだ見た事はありませんが、その写真は昔から穴があくほど見ています。何年か前に東京で開催された「バラガン展」でバラガンの設計した住宅の実物大模型やバラガン自身のスケッチなども見てきました。僕の「死ぬまでに一度は見ておきたい建築リスト」には当然載っている建築です。
奇抜な色使いに目がいきがちですが、その空間は静寂に満ち溢れています。光の扱いをとても大切にする建築家であり
、「インターナショナルスタイルの建築は、例えばガラスのカーテンウォールによって、住宅やオフィスから安らぎと光の手触りを奪いました。」と語っています。
まさしく今流行っているような(コンセプト的な意味で)フラットで平坦な建築に、”安らぎ”や”光の手触り”など感じる事は出来ませんし、そんな建築にどこかで居心地の悪さを感じてしまいます(僕だけでしょうか?)。
そして、このバラガンの自邸を含め、バラガンの設計する住宅の外観のそのほとんどは、驚くほど簡素で素っ気ないもので、バラガン自身も
「建築は内側から考えるべきです。」と言っています。
建築家のタイプを乱暴に大きく二つに分けるとしたら、「外観(フォルム)が重要と考えるタイプ」と「内部(空間)が重要と考えるタイプ」の二つに分かれます。
もちろんバラガンは後者の代表格といったところでしょう。ルイス・カーンもA.アアルトも、そして吉村順三も同じタイプと僕は思います。そして僕もそんな建築が好きだし(←名だたる巨匠たちと同じ土俵で語るなって?^^;)、そんな建築をつくっていきたいと考える。