以前にも書いた事があるけれど、僕がブログなどで現場に足しげく通う様子などを書いているのを見て、時々現場監理だけの依頼のメールが届く事がある。
その依頼内容は、「大変しっかり現場監理をされているようなので、現在工事中(あるいはこれから工事が始まる)の自分の家の現場監理をお願いできないでしょうか。」というもの。
その度に僕は、大変申し訳ないとは思うのだけれど、丁重にお断りさせていただく。
本当に申し訳ないと思うけれど・・・。
現場監理をしっかりしていると感じられた事は確かにうれしい事ではあります。ただ、一般の方はよく誤解されるのですが、現場監理というのは何も職人や工務店が手抜きをするのを見張るのが目的ではありません。
そもそも現場監理者が見ていなければ手抜きをしてしまうような職人や工務店とは僕は仕事をしません。
もちろん現場の間違いや施工の不備を指摘したり、手直しをお願いする事はありますが、手抜きをしないか目を光らせている訳では決してありません。あくまで図面通りに工事が進んでいるか、設計の意図は間違いなく反映されているかを確認するためのものであり、時には現場で変更や改良などをお願いする事も多々あります。
建築というものは、他の機械設計などと比べて使用する材料の種類がとてつもなく多く、その取り合いや納め方も実に多岐に渡ります。
設計図をいくら詳しく大量に描いたところで、実は建築のすべての部位について明確に描き切れるものではありません。
だからこそ現場で確認し、修正や改良をする必要が出てくる訳です。僕がいつも言うように、現場は何も設計図の通りにすべて進める事を目的にしていません。良い建築をつくる事が目的であり、その目的のためには臨機応変に対応していくべきであると僕は考えています。
つまり本来、設計と現場監理は別々のものではなく、現場監理というものが実は設計という行為の延長線上にあるのです。
だから、僕は他の人が設計した建物の現場監理をする事が出来ないという訳です。
もちろん、どうしても困ってしまっている方にはそれなりのアドバイスをしたり、場合によってはワンポイントのチェックを引き受ける事はあるかもしれませんが、あくまでそれは建築士という責任において行うというごく限られたものでしかありません。
しかし、第三者の僕のような者に相談されるというのは、その時点で既に、当事者にとってはかなり深刻な状態であると言わざるを得ないような気もします・・・。
不安に感じた事、疑問に感じた事はまず最初に当事者である設計士、現場監理者、あるいは現場監督に相談すべき事です(もちろん感情的にならずに)。