昨夜に熊本で発生した震度7の地震。
まだ被害の全容は明らかになっていませんが、お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りすると共に、余震も続いているようなので、身の安全を確保して、倒壊しそうな建物には近づかないように気をつけていただきたいと願います。
昨夜のニュース速報で震度7という数字を見た時には正直驚きました。これはめったにある震度ではありませんから。震度7というのが記録されたのは、当時の震度の基準の違いはあるものの、1995年の阪神淡路大震災、2004年の新潟中越地震、そして2011年の東日本大震災だけです。
震度7というのは気象庁震度階級の最大震度であり、極めて稀に発生する地震(数百年に一度程度)に相当する震度であります。
建物の耐震性確保を定めている建築基準法では、震度6強から震度7に対して倒壊、崩壊しない程度の耐震性を求めています。
ここで大事なのは、建物がビクともしないようにすると定めている訳ではないという事です。つまり、建築基準法というのは建物を守るという意味ではなく、人命を守る事がその第一の目的であり、建物が倒壊、崩壊しなければ人命が助かる可能性が高いと考えているからです。
しかし、建築基準法で現在の耐震基準(いわゆる新耐震基準)が定められたのは1981年(昭和56年)であり、それ以前に建てられた建物については上記の耐震性が確保されていない場合が極めて多いと言えるのです。
そのような耐震性の低い木造建物は、震度6強で傾くものや倒れるものが多くなり、震度7においてはそれがさらに増える事になります。そして、震度7では耐震性の高い木造建物でも稀に傾くことがあるレベルなのです。
こういった地震を目の当たりにする度に、僕ら建築士はその責任感を強く感じずにはいられません。以前に受けた耐震講習の時に聞いた「地震で人の命は奪われない。人の命を奪うのは地震によって倒壊する建物だ。」という言葉を、僕ら建築士は常に肝に銘じなければなりません。
青木昌則建築研究所